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地方中核都市の中でも、「仙台エリア」の次に地価上昇を加速させたのが「福岡エリア」です。福岡市の今年1月1日の地価上昇率は、「商業地」がホテル用地の活発な取引などで、8.5%増(昨年5.9%増)と大幅にアップ。「住宅地」も全国政令市の中でトップの人口増加率を見せ、3.5%増(昨年2.8%増)の顕著な上昇を示しています。そこで今回は、上昇テンポの著しい「福岡エリア」の特徴と要因を探ってみました。

博多駅前2丁目の商業地では、26.2%もの上昇

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まず、「商業地」については、外国人観光客の増加を背景にホテル・店舗の用地需要が活発化し、特に博多駅周辺ではホテル需要が顕著です。今後の大規模再開発ビルのプロジェクトの事業化と地下鉄「七隈線」の延伸計画とも相まって、上昇幅が昨年よりさらに加速・拡大した地点が多く見られました。一層の集客力向上が見込まれていることが背景なのでしょう。

中でも、3大都市圏を除いた地方圏の中でも最大の上昇を示した地点が、「博多駅前2丁目」の博多駅500メートルのところです。この地区は1平方メートル当たり217万円(昨年は172万円)で26.2%もの上昇を見せました。さらにJR九州が総額50億円を超えるホテル用地を取得するなど、高額物件の売買取引がとくに目立ちました。このように、ホテル用地需要が高値取引となって顕在化し、都心商業地の牽引役となっています。

具体的には、福岡市の「博多区」が12.6%の伸び(昨年は9.2%増)を見せ、次いで「中央区」9.5%増(昨年7.0%増)、「南区」6.5%増(昨年3.6%増)、「東区」6.2%増(昨年は2.5%増なので2倍強の伸び)となっており、市内全区でプラス基調となっています。

オフィス空室率が大幅改善し、賃料も上昇に転換

福岡市のオフィス空室率は、リーマンショック以降15%台と悪化してきましたが、ここへきての新規供給が低水準にとどまっていることとも相まり、昨年10月時点では空室率4.69%と改善しました。つれて募集賃料も底を打っており、一部のSクラスビルでは上昇に転じています。注目の博多駅前の新築オフィスの賃料は、今年になってこれまでの相場観を超える高値成約となっています。

外国人観光客数も増加

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外国人の観光客数増加については、昨年春以降マニラ、ヘルシンキ、マカオの直行便が新規就航したほか、博多港の外国クルーズ船寄港数の大幅増加(H27年245回で、H28年は312回)したことが大きく寄与しました。博多駅複合商業施設の平成27年度の売上高は、前年度比5.2%増の1,035億円となり過去最高記録を更新、博多駅ファッションビルの売り上げは3.6%増の382億円などと伸びています。

人口増加率が最も高い「住宅地」も堅調な伸び

福岡市の「住宅地」については、H25年に住宅需要が回復過程に入りました。昨年はデベロッパーが市場のけん引役となり、現下の低金利を背景に高値売買が散見されています。地価の上昇率がさらに拡大し、今年の地価は全体で3.5%上昇しました。
その背景には、福岡市のH27年国勢調査の人口が153万人と、神戸市を抜いて政令市で全国5番目となったことがあります。人口増加率は政令市の中でもトップで、毎年約1万人ずつ人口が増えているという事情があります。

戸建て住宅やマンション分譲の販売動向は、建築費高騰の影響や仕入れ価格の上昇等により販売価格も上昇基調にあるとはいうものの、堅調に推移しています。とくに鉄道駅から徒歩10分圏内、および福岡市早良区‣中央区などでは堅調な売れ行きを見せています。このため、不動産各社は、エリアを絞りながらも、積極的な仕込みを継続しており、特に優良なマンション素地は依然として高値で取引されています。

マンション用地の取得難で、周辺の久留米市などへ

投資資金の流入状況については、Jリートを中心とした大型物件の取得、私募ファンドおよび法人・個人投資家等(相続税対策に関する収益物件の取得を含めて)によるレジデンス系ビルの取得は、いぜんとして活発です。このため、福岡市では優良物件が少なくなり、取引利回りも低下傾向が続いていることから、これまで動きが弱かった久留米市や北九州市へと、マンション用地の需要が向かっている状況が見られます。