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平成29年6月14日、ロンドン西部の超高層マンション(24階建て、全127戸)で起きた火災は、瞬く間に最上階にまで燃え上がり、死者79人という英国史上でも最悪の大惨事となったのは記憶に新しいです。このすさまじい焼け跡の光景を見て、日本の高層マンションの防火・防災の安全対策は果たして大丈夫なのか、大いに気になるところでもあります。そこで、わが日本の高層マンションの火災・地震等による防火・防災の安全対策の最新状況を見てみましょう。

日本のマンションは、ロンドン丸焼け火災のような可能性は低い

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わが国の高層マンションは、火災が発生した場合の延焼防止対策や避難対策については厳しい規制が定められており、今回のロンドンのような火災が起きる可能性はきわめて低いとされております。しかし、これまでの高層マンションの火災発生状況を見ると、延焼拡大しているケースが数多く見られ、法令通りに建築されているからと言って安心できる状況ではありません。

東京消防庁によると、「過去5年間(平成24年~28年)の管内の高層マンション(11階建て以上)の火災発生件数」は、245件にのぼっています。平成28年が36件で、27年が59件、26年46件、25年37件、24年67件という内訳で、年平均にして50件となっています。

出火原因は、「ガステーブル」が最も多く、次いで「たばこ」

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出火原因はグラフの通りで、「ガステーブル」(26%)が最も多く、次いで、「たばこ」
(18%)、「放火」(15%)、「電気ストーブ」(5%)の順になっています。電気ストーブ、コード、コンセント、電気コンロ、電気機器などを合計すると、電気に起因する原因がいかに大きな比率を占めているかということがよくわかります。また、子どもの火遊びのほか、高齢者や認知症の方の火気取り扱いの不良に起因する火災が増加傾向にあります。

日本の高層マンションの場合、建築基準法や消防法の基準に適合していれば、上階や他の区画への延焼危険は非常に少なく、全体的には出火室1区画にとどまっている例が多い状況です。過去の延焼拡大した事例の要因を見ると、延焼経路はサッシ戸、窓、ドアなどの開口部からなのです。

ベランダ構造が、上階への延焼拡大を防いでいるが、ドアの開放は危険

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上階への延焼拡大が少ない理由は、ベランダ構造にあると言われています。しかし、ベランダ内に置かれた可燃物や、ベランダに干した洗濯物、布団などがあった場合は、上階へ延焼拡大する媒介物となってしまうので注意する必要があります。

また、マンションの出入り口は常時閉鎖式ドア構造となっていますが、延焼拡大したある事例では、開放されたままの状態で吸気と排気が重なったことにより、延焼速度が格段に早まり、煙や炎が廊下や室外に拡大してしまったとあります。とくに出入り口が中通路だけになっている場合は、扉が開放状態になって一気に火煙が拡大してしまい、避難活動、消火活動が極めて困難な状況となります。

ロンドンの超高層マンションの火災発生後、東京消防庁では日本の高層マンション576棟に立ち入り検査を行いました。そのうち約8割の463棟で、837件もの消防法違反の指摘されたと発表しています。主な違反内容は、①防火管理者の未選任、②消防計画の未作成、③自衛消防訓練未実施、④消防用設備等の点検報告未提出――などとなっています。

居住者間の「防災コミュニティーの形成」が、何より重要

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今後の防火、防災対策としては、火災ばかりでなく、震災時の事前対策や応急対策、復興・復旧対策をはじめ、急病者などを日常的に支えあうシステムも必要となってくるでしょう。最近ではAEDアプリなど、マンション内に異常があった場合にスマートフォンで登録者に緊急要請することで、通報を受けた登録居住者がAEDを搬送、あるいは救命講習終了者が駆けつけて、応急救護を行うなどのシステムも公表されております。いずれにしろ、居住者の防火・防災意識の向上を図り、有事の際に助け合う「防災コミュニティーの形成」などによる災害に強いマンションづくりが求められています。

すでに先進的な分譲マンションでは、管理会社等と一体となって、「安全・安心」な快適暮らしのための各種防火・防災対策が講じられて、それへの取り組みが一層強化されています。